はじめに

はじめまして。信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部 児童精神科医の原田 謙と申します。

 このホームページは,自閉症スペクトラム障害をもつ青年,あるいは成人(以下ASD者)とその周囲の人間が,学習を通してASD者を正しく理解し,より適応的な行動がとれるよう支援することを目的に作成されています。

 これまでASD者に対する診療は,主に診断をつけることに主眼がおかれ,拘りや衝動性を押さえるための薬物療法と,一部の機関で行われている集団療法やデイケア以外には有効な治療・支援が行われていなかったと思います。これはASD者の診療ができる医療機関が少なかったからだけでなく,有効な治療・支援方法そのものがなかったからだと私は考えました。

 一般に、「エビデンスが証明された治療法」は最大公約数的なものです。しかし、ASDは精神疾患と言うよりは、性格に近いもの,いわば「特性」であり、最大公約数的治療は恩恵をもたらすものの、十分ではありません。

 さらに、子どもと違い青年期以降のASD者は,「挨拶をする」とか「相手の目を見て話をする」といった基本的な対人スキルは身につけている一方,生活上困っていることは千差万別です。それは,置かれている環境と,個人の特徴の相互作用から生まれるものだからです。そこで要求されているのはテーラーメイドではなくオーダーメイドの治療/支援です。

 こうした状況に対して、いくつかの自己学習用の書籍も出版されていますが,理解のみで対処法がほとんど載っていないものか、また、あまりにも個人的な体験に終始していたり,かなりの言語性知能と内省力を必要とするものでした。

 私は,ASD者が、自己の適応を向上させるために行っている対処行動を集積することが、この状況を打開する鍵になると考えました。このサイトが,あなたの困りごとを、少しでも軽減することを願ってやみません。

平成24年7月7日

信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部 原田 謙

【研究協力者】